梅雨時期の寝具管理|布団・マットレスの湿気とカビを防ぐ対策

梅雨の布団・マットレスの湿気対策
梅雨に入ると、ホテルや旅館、介護施設、社員寮などでは、客室や居室の湿気対策が欠かせません。
床や窓、浴室などの目に見える場所は定期的に確認されやすい一方で、見落とされやすいのが、布団やベッドマットレス、枕、ベッドパッドといった寝具の内部です。
寝具は毎日の使用によって汗や水蒸気を受け止めています。
しかし、梅雨時期は空気中の湿度が高くなるため、寝具に取り込まれた水分が十分に放出されません。
その結果、表面は乾いているように見えても、布団の中わたやマットレスの内部、マットレスとベッドフレームの接地面などに湿気が残りやすくなります。
したがって、梅雨時期の寝具管理では、シーツ交換やベッドメイクだけでなく、寝具内部の水分をどのように逃がすかという視点が重要です。
本記事では、梅雨時期に寝具の湿気が増える理由をはじめ、ホテル・旅館・介護施設などで実践したい管理方法を紹介します。
梅雨時期は寝具の水分が抜けにくい
布団やベッドマットレスには、吸湿性や放湿性を持つ繊維素材が使用されています。
そのため、就寝中に発生した汗や水蒸気を一時的に吸収し、寝床内の蒸れを和らげる働きがあります。
一方で、寝具が吸収した水分を外へ放出するためには、周囲の空気が寝具よりも乾いており、空気が適度に動いていることが必要です。
しかし、梅雨時期は室内の空気自体が多くの水分を含んでいます。
さらに、雨天が続くと窓を開けにくくなり、寝具を屋外に干せる日も限られます。
つまり、寝具が水分を吸収しても、次の使用までに十分な放湿ができない状態になりやすいのです。
寝具には保温性だけでなく、吸湿性・透湿性・放湿性が求められ、また、寝室の温湿度と寝床内部の温湿度には関係があり、室内環境が寝具内部の快適性に影響することが繊維学会誌に掲載された寝具に関する報告で示されています。
さらに、看護分野で行われた高湿度環境下のマットレスに関する研究では、マットレスに水分が蓄積する傾向が確認され、乾燥操作の必要性が示唆されています。
参考:ベッドと体表面間の温湿度変化・高湿度環境下におけるマットレスの重量変化|日本看護研究学会
このように、寝具は水分を受け止めるだけでなく、使用後にしっかり乾燥させるところまで含めて管理する必要があります。
「シーツが乾いているから大丈夫」とは限らない
客室清掃やベッドメイクでは、シーツや枕カバー、掛け布団カバーなどを交換します。
もちろん、リネン類を清潔に保つことは寝具衛生の基本です。
しかし、リネン類を交換しただけでは、布団やマットレス本体に残っている湿気までは取り除けません。
特にベッドマットレスは、表面生地、詰め物、ウレタン、フェルト、スプリングなどが重なった厚みのある構造であるため、表面が乾いていても、内部や裏面に水分が残っている可能性があります。
また、マットレスの下部はベッドフレームや床板と接しているため、空気が流れにくい場所で、壁際に設置されたベッドや、床との間隔が狭いベッドでは、さらに湿気が滞留しやすくなります。
布団についても同様です。
使用直後の布団を畳んで押し入れへ収納すると、就寝中に取り込んだ水分が十分に抜けないまま内部に閉じ込められ、その状態が繰り返されれば、寝具は少しずつ湿気を蓄積していくことになります。
したがって、梅雨時期は「リネンを交換したか」だけでなく、「布団やマットレス本体を乾かせているか」まで確認する必要があります。
相対湿度75%を超える環境ではカビの繁殖が速まる
寝具の湿気を放置した場合、特に注意したいのがカビです。
文部科学省の「カビ対策マニュアル」では、温度25℃の場合、相対湿度70%ではカビが数か月で繁殖し、75%を超えると繁殖速度が急激に速くなると説明されています。
また、カビ対策の目安として、相対湿度が65%を恒常的に超えていないか監視することも推奨されています。
もちろん、この数値は文化財を保管する環境について示されたものです。
そのため、すべての寝具で同じ期間内にカビが発生するという意味ではありませんが、温度と湿度が高く、水分が長時間残る環境ほど、カビが繁殖しやすくなるという基本的な考え方は、寝具管理にも当てはまります。
寝具の場合、室内全体の湿度がそれほど高くなくても、マットレスの裏側やベッド下、壁際、押し入れの奥など、空気が動きにくい場所では局所的に湿度が高くなることがあります。
そのため、客室中央に置いた湿度計だけを見て「問題ない」と判断するのではなく、湿気がたまりやすい場所を直接確認することが大切です。
カビの詳しい発生原因や健康への影響については、次の記事で解説しています。

梅雨時期に確認したい寝具のチェックポイント
梅雨時期の寝具管理では、カビが目に見えてから対応するのではなく、その前段階にある変化を捉えることが重要です。
まず確認したいのが、マットレスの裏側や側面です。
特に、ベッドフレームとの接地面、壁に近い部分、縫い目、取っ手周辺には湿気が残りやすいため、定期的に目視します。
次に、布団やベッドパッドを手で触り、湿り気や重さに変化がないかを確かめます。
日常的に扱っているスタッフであれば、通常より重い、冷たく感じる、ふくらみが戻りにくいといった変化に気づくことがあります。
また、収納中の寝具も注意が必要です。
押し入れやリネン庫の奥、床面、壁際に寝具を隙間なく詰め込むと、空気の通り道がなくなります。
さらに、窓周辺の結露、エアコンフィルターの汚れ、浴室から客室へ流れ込む湿気なども、寝具周辺の湿度を高める要因になります。
梅雨時期は、次の箇所を重点的に確認するとよいでしょう。
・ベッドマットレスの裏側と側面
・ベッドマットレスとベッドフレームの接地面
・ベッドと壁の間
・ベッド下や床板
・布団、枕、ベッドパッドの湿り気
・押し入れやリネン庫の奥と床面
・窓周辺の結露や壁紙の変色
・客室や収納場所のこもった空気
ただし、寝具のニオイについては湿気だけでなく、汗や皮脂、細菌、カビなど複数の要因が関係します。
詳しくは、既存の記事をご覧ください。
梅雨時期の寝具管理で実践したい6つの対策
1.使用直後の布団をすぐに収納しない
起床直後の布団には、就寝中に取り込んだ水分が残っています。
そのため、使用直後に畳んで押し入れへ収納すると、湿気を閉じ込めることになります。
可能であれば、掛け布団をめくり、敷布団やマットレスの表面を一定時間空気に触れさせてから収納やベッドメイクを行います。
ただし、客室の稼働状況によっては、十分な放湿時間を確保できないこともありますから、その場合でも、清掃中に掛け布団を外す、マットレス表面に送風するなど、短時間でも空気に触れさせる工程を設けることが重要です。
2.寝具周辺の空気を動かす
湿気対策では、単に窓を開けるだけでなく、湿った空気を滞留させないことが大切です。
晴天時や外気の湿度が低い時間帯は、窓開け換気が有効です。
一方、雨天時に湿った外気を大量に取り込むと、室内の湿度が下がらない場合があります。
そのため、雨天時は換気扇、エアコンの除湿運転、除湿機、サーキュレーターなどを組み合わせて、室内の水分を排出します。
厚生労働省のカビ・ダニ対策資料でも、雨天時は窓を閉め、エアコンや扇風機などで室内の空気を動かす方法が示されています。
3.マットレスの裏側にも風を通す
ベッドマットレス表面だけを送風しても、裏側や接地面に湿気が残っている場合があります。
そこで、定期的にベッドマットレスを起こす、ベッドフレームとの間に空間をつくる、ローテーション時に裏面を確認するなど、マットレス下部へ風を通す工程を設けます。
ただし、大型・重量のあるマットレスを無理に持ち上げると、スタッフの怪我や転倒事故につながる恐れがあります。
複数人で作業する、専用器具を使うなど、安全面への配慮も欠かせません。
4.寝具を収納庫へ詰め込みすぎない
予備の布団や枕、ベッドパッドを隙間なく収納すると、内部の空気が動かなくなります。
そのため、壁面や床面との間に空間を設け、すのこや棚を使って空気の通り道を確保します。
また、乾燥が不十分な寝具を収納庫へ戻さないことも重要です。
さらに、収納庫の扉を定期的に開放し、サーキュレーターなどで送風すると、奥にたまった湿気を外へ逃がしやすくなります。
5.温湿度を数値で記録する
湿気は目で確認しにくいため、スタッフの感覚だけに頼った管理では、対応にばらつきが生じます。
そこで、客室や寝具収納場所へ温湿度計を設置し、定期的に記録します。
特に、外気湿度が高い日、連泊客が多い期間、満室が続いた後、浴室使用後などの変化を記録すると、施設内で湿気がたまりやすい条件を把握できます。
重要なのは、湿度が上がった瞬間だけでなく、高い状態がどの程度続いているかを見ることです。
数値を継続的に確認すれば、除湿運転の開始時期や、寝具乾燥を実施するタイミングも判断しやすくなります。
6.定期的に寝具内部まで乾燥させる
換気や送風は、日常的な湿気対策として欠かせません。
しかし、布団やマットレスの内部に蓄積した水分を、短時間の換気だけで十分に取り除くことは容易ではありません。
特に、客室稼働率が高いホテルや旅館、長時間ベッドを使用する介護施設、定員分の寝具を収納している社員寮や研修施設では、寝具本体を計画的に乾燥させる必要があります。
そのため、家庭用の布団乾燥機、施設内の乾燥設備、外部クリーニング、業務用の寝具乾燥サービスなどから、対象数や運用状況に合った方法を選びます。
業務用大型乾燥機を搭載したふとん乾燥車であれば、施設へ訪問し、布団やベッドマットレスなどをまとめて高温乾燥できます。
天候に左右されにくく、寝具を外部へ長期間預けずに処理できるため、梅雨時期の施設管理にも適した方法です。
詳しい仕組みについては、次の記事をご覧ください。

害虫対策は「湿気を減らすこと」だけで完結しない
梅雨時期は、ダニなどの害虫についても気になる季節です。
ただし、害虫対策は、除湿や乾燥だけを行えば完了するわけではありません。
寝具の乾燥に加えて、清掃や吸引、寝具周辺の点検などを組み合わせる必要があります。
また、トコジラミは外部から荷物や衣類などに付着して持ち込まれる可能性があり、室内の湿度管理だけで侵入を防ぐことはできません。
したがって、梅雨時期の寝具管理では、湿気対策と害虫対策を混同せず、それぞれの目的に応じた管理を行うことが大切です。
ダニやトコジラミの詳しい生態、熱処理、施設内での点検方法については、既存の記事で解説しています。
梅雨時期の寝具管理は「乾燥させる仕組みづくり」が重要
梅雨時期の寝具管理では、寝具に水分を蓄積させないことが基本です。
そのためには、使用後に空気へ触れさせる、寝具周辺の空気を動かす、収納場所へ隙間を設ける、温湿度を記録する、定期的に寝具内部まで乾燥させるといった対策を組み合わせる必要があります。
一方で、ホテル・旅館・介護施設などでは、客室稼働や人員配置の都合から、すべての寝具を頻繁に天日干しすることは現実的ではありませんから、日常管理で対応する範囲と、業務用乾燥設備や専門サービスで対応する範囲を分け、無理なく継続できる管理体制を整えることが重要です。
目に見える部分だけでなく、布団やマットレスの内部まで乾燥した状態を保つこと。
それが、梅雨時期の寝具を清潔で快適に維持するための基本です。
